2012年02月06日

「マホロミ」冬目景

4091843360マホロミ 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
冬目 景
小学館 2012-01-30

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建物の記憶が見えるようになってしまった大学生(土神)が、同じように建物の記憶が見える女性(真百合)と共に、かつての建物の主の思いを読み解いていく物語。
主人公が建築家の学生であり、幼なじみの女の子が建築部品マニアであったりするので、建物に関する蘊蓄が日常会話的であり、押しつけがましくない雰囲気です。
また、建築士であった祖父の残した建物に住むところから始まっているために、家に住む人の想いを推し量ることに対する指向性が、主人公の中に(ということは、それを読む読者の側にも)出来上がっていることも、自然に物語世界に入れる下地になっているのではないかと感じました。
横浜が舞台になっていますが、六角橋とか大倉山とか、海側ではない地域がメインで、紋切り型の横浜のイメージになってしまっていない点も、個人的にはお気に入りです。象の鼻パークあたりの話も出てくるのですが、すでにその建物からは海が見えずに、街の人たちも実は海が見えてないことに慣れてしまっている雰囲気で描いている辺り、リアルな感覚なのではないかと思います。

僕が横浜で写真を撮るようになったのは、ここ数年のことで、しかも明治以降の建築物に思い入れがあるわけではありません。むしろ、洋館に関しては「日本の風土と合わないじゃん」という気持ちがあるので、むしろ横浜の無理矢理西洋風にしているような街並みには、違和感を覚えることも多いのです。
でも、古書や中古カメラなど、古い物をいつまでも存在させ続けることに全く郷愁を感じないわけでもないので、建物に対する思い入れも理解できないではありません。この漫画の中にも「建物は使ってこそだと思ってるからね」というセリフがあるのですが、僕も古いカメラを骨董扱いするのは嫌いで、現役で使いまくってます。

冬目景さんの漫画は「ハツカネズミの時間」で初めて読んで中途半端なSF感に手応えを感じなかったのですが、「ももんち」で良い感触をつかみ「羊の歌」「イエスタディをうたって」でかなり好きになりました。
この作品も「建物の記憶を読み取る」というのがサイコメトリー的にSFっぽく書かれているのではなく、建物に心があるかのように擬人的に描かれているのが、冬目さんの絵柄やストーリーの雰囲気に合っているように思えます。
続きが楽しみな作品ですが、「イエスタディをうたって」の続きもよろしくお願いしますよ…。
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2010年12月04日

「ホルモー六景」万城目学

4043939027ホルモー六景 (角川文庫)
万城目 学
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-11-25

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「鴨川ホルモー」の続編となる短編集です。
前作「鴨川ホルモー」は、なかなか面白いな、とは思ったものの、「凄く気に入った」というほどではありませんでした。京都の四方にある大学のサークルが式神を使役して合戦を行うという、京都の歴史の奥深さと怪しげな雰囲気を感じさせる設定は好きだったのですが、ストーリー的にもう一つ盛り上がりがなかったのと、奇妙な鬼語やチョンマゲなど、コメディではなくギャグに走った見せ方が、もう一つ気に入らなかった理由です。
しかし、続編にあたる今作では、ホルモーの世界がすでに構築された後であるからか、話の作り込みは丁寧ですし、キャラクター一人一人の魅力も十分に描かれている印象を受けました。
個人的には、「もっちゃん」と「丸の内サミット」がお気に入りです。おかげで、困ったことに、ここ数日、さだまさしの「檸檬」が頭の中で流れっぱなしです。晩酌は「玉乃光」だし(笑)
タグ:万城目学
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2010年09月01日

「“文学少女”見習いの、卒業。」野村美月

4047267252“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)
野村 美月 竹岡 美穂
エンターブレイン 2010-08-30

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「文学少女シリーズ」の外伝、「見習いシリーズ」の第3巻です。
「“文学少女”見習い、の寂寞。」(長編)、「ある日のななせ」(掌編)、「“文学少女”見習い、の卒業。」(短編)の3本立てになっています。

「寂寞」の題材は、夏目漱石の「こころ」。3年前に自殺してしまった櫂という少年をKになぞらえ、その死の責任が自分にあると自責の念を抱える人物を、二人登場させています。
悲劇的な終わり方をする物語を題材にしながらも、その先を想像することで、生き続けなければいけないと訴えるのメッセージは、文学少女シリーズの中で繰り返されてきたものです。
もちろん、遠子先輩から受け取ったメッセージを、心葉がさらに他の人へとそれを伝えていくという、連続性を意識させるという意味合いはあるのですが、それはもう「初恋」でもやっていることなので、ややインパクトに欠ける感じは否めません。
それに、劇の舞台で台詞を言うべきか言わざるべきかという緊迫した逡巡のあった「愚者」や、プラネタリウムという視覚的な美しさのあった「巡礼者」、「生き続けて欲しい」という願いが込められた桜色の貝がこぼれるシーンの美しさが出色だった「初恋」に比べると、舞台効果という意味でも地味でした。
物語の構成も、最初に読んだ時には「ややあっさりかな」と思っていたのですが、再読してみると、そここに伏線がしかけてあり、この辺りのうまさは相変わらずな感じです。
というわけで、全体的には「今ひとつ」の感があった話なのですが、その中で最も印象に残るのは、心葉の変化です。
自分が井上ミウであることを菜乃や瞳に告げたり、自分と美羽との間にあったことを分析的に語ったり、あれほど目を背けていた自分の作品「青空に似ている」の映画を見る気になったりと、様々な変化が描写されています。

それは、菜乃やななせについても同じで、「寂寞」だけではなく「ある日のななせ」や「卒業」でも同じです。菜乃は文学作品への理解と自分の周りの人々への共感を深めていきます。どちらが鶏でどちらが卵なのかは、微妙なところですが。
ななせは、心葉に対して自然に会話ができるようになり、人とのつきあいに不器用だった彼女が、「恋人」という立場ではないにしろ、人に受け入れられる自分というイメージを獲得できたように思います。臣くんに対しても、彼は「夕歌の代理」という態度を崩そうとしないですし、彼女もそのラインを無理に崩そうととはしていないようですが、「夕歌へ」ではなく「臣へ」という意識でメールを綴りつつあるのではないかと感じました。まあ、これは予定調和なんですが。

「卒業」は、チェーホフの「桜の園」が題材です。先にも書いた彼女の成長と、心葉と過ごした1年間への追憶とが、端正にまとめられた一編です。
送り出す側に立った菜乃が、これからどんな風に成長していくのか、見てみたい気もしますが、それをやっていたら、キリがないですね。でも、挿話集で短編の1本でもあると嬉しいなぁ。

さて、この巻で「見習いシリーズ」は終了となります。「文学少女シリーズ」としては、あと「挿話集4」と「半熟作家と“文学少女”な編集者」(おそらく遠子先輩と心葉が再会した後の話)の2巻を残すのみとなりました。
映画のパンフレットとか、映画のDVDとか、メモワール(短編アニメ)の初回限定版とかに、書き下ろしの読み切りがついてるんですが、あれも「挿話集」に入れてもらえるんでしょうか。特典という意味では入れない方が希少性が高まるんでしょうが、後から読む人のことを考えたら、本で読めないものがなるべくないようにして欲しいものです。
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2010年06月07日

「小暮写眞館」宮部みゆき

4062162229小暮写眞館
講談社 2010-05-14

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宮部みゆきさんの「小暮写眞館」を読みました。
僕は基本的に文庫派なので、これまで宮部さんの本をハードカバーで買ったことはないのですが、表紙の写真が、僕の大好きな小湊鉄道の飯給(いたぶ)駅の写真だったので、たまらず購入しました。

表紙に鉄道写真を使うだけあって、普通の小説としては妙に「テツ分が高い」ですね。主人公がテツなわけではないのですが、鉄道研究会に属している友人がいる(というより、話が進むにつれて友人になっていく)という設定なのですが、この友人や鉄道に関する話が、物語の中で、割に重要な役割をになっています。
表紙の写真の飯給駅も、ラストで重要なポジションを占めています。

宮部さんの「現代物」は、これまでミステリー系が中心だったと思うのですが、この物語はミステリーではありません。最初は「心霊写真の謎を探る」みたいな話から始まることは始まるのですが、その調査というのが、下町に住むお年寄りに、昔あったできごとを聞いて回るみたいなことが中心で、あまり「謎解き」な感じではありません。
そこから生まれた人間関係から、主人公が色々な世界を知っていく、というような描き方です。
例えば、それが、戦争の話だったり、不登校の話だったり、恋の話だったりするわけで、いろいろな要素を含んだ「総合小説」を意識しているのかな、と感じました。
ただ、どの話にも底流に流れているのは「家族」、しかも喪われてしまった「家族」への想いです。最初は見え隠れしていたテーマが、ラストに向かって力強さを増してきた感があり、これまでの宮部さんの「ストーリー展開の見事さでページをめくらされる感覚」とは違った意味で、読み応えのある小説でした。

喪われてしまったものが「回復する」話かというと、そうではないと思います。中にはそういう話もありますが。自分の背負っているものから目を背けずに、それをしっかり見据えた上で、その後をどう歩んでいくか…。飯給駅で、正面から向かってくる列車を見つめた「彼女」の想いは、そんなところにあったのではないでしょうか。しかし、鉄路はそこで途切れることなく、まだまだ先へと続いているのです。
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2010年02月12日

「海街diary 3」吉田秋生

4091670407海街diary / 3 / 陽のあたる坂道 (flowers コミックス)
小学館 2010-02-10

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「海街diary」の3冊目、「陽のあたる坂道」が出ました。
この巻では、亡くなった父親や障害を抱えた裕也に対するすずの気持ちや、そんなすずを見守りつつ、
自分の恋の行く末を心配する幸の気持ちを中心に話が展開します。
「死」や「障害」というものをテーマにした、重い話ではありますが、
古都・鎌倉の風物や、人と人とのつながりを丁寧に描く作風で、重苦しさは感じさせません。
むしろ、ニヤニヤさせられながら読むシーンもたくさんありました。
すずと幸の二人も、それぞれ失うものがありながら、それを受け止め、
前向きに歩いていこうとする強さを感じさせてくれる物語になっています。

それにしても、面掛け行列や鎌倉花火大会、力餅屋さんやトンビ(笑)など、
鎌倉を代表する風物が、効果的に使われていますね。

帯には「未来の古典を約束された超人気シリーズ」などと書かれていますが、
この宣伝文句が、あながち過大評価とは言えないマンガだと思います。
タグ:吉田秋生
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2010年01月23日

「機動戦士ガンダム THE ORIGIN 20巻」安彦良和

4047152854機動戦士ガンダム THE ORIGIN (20) ソロモン編・後 (角川コミックス・エース 80-23)
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-01-22

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ララァ編は、アニメ版からの改変が少なかったようですが、ソロモン編に入ってから、また「独自色」が強くなってきました。
ザビ家の内紛と駆け引きを、前面に押し出した描き方になってきています。
「貴公はそのヒットラーの尻尾だな」はデギン公王の名台詞ですが、
アニメ版のデギン公王は、もう少し達観していたというか、己の無力さを悟っていた気がします。
そこで、焦った上での独断専行だったわけですが、
今回の漫画版では、キシリアにそそのかされた感が強いですね。
そのキシリアも、アニメ版ではもう少し父思いの人物像でしたが、漫画版ではかなりの策士です。
「ヒットラーの尻尾」と言われたギレンの反応も、漫画版はかなり怒ってましたが、アニメ版はそう言われるのも覚悟の上みたいな感じで、もう少し思慮深い人物に見えました。漫画版だと、器の小さい独裁者にしか見えなくて、ちょっと嫌だなぁ…

スレッガーさんのビグ・ザム特攻とか、アムロとララァの邂逅シーンとかの絵は、かなりの迫力。
アニメ版(映画のね)の絵も美しかったですが、漫画版もかなり重厚感があると思います。
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2009年08月16日

「“文学少女”見習いの、初戀。」野村美月

4757748299“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2009-04-30

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文学少女シリーズの外伝です。
心葉くんは三年生に進級し、文芸部にも新入生が入ってきます。
遠子先輩に支えられてきた心葉が、今度は新入生の菜乃を支えていきます。そんな心葉がたくましく見え、かなりカッコイイです。
しかも、後輩に向かって文学作品の蘊蓄を話したり、想像力で事件に立ち向かったりする姿には、単に彼が成長したというだけではなく、遠子先輩の影響をひしひしと感じます。
「未来への全身」と「過去への追憶」の両方を描いた、見事な続編となっていると思います。

ちなみに、モチーフは近松門左衛門の「曽根崎心中」。
心中物ですから、相変わらず重い話なんですが、死んでしまおうとする相手を勇気づけるシーンが、とても美しいです。

この外伝がどこまで続くかわかりませんが、あとしばらくは「新しい物語」が読めるのだと思うと、嬉しいですね。
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「“文学少女”と恋する挿話集 1」野村美月

4757745788“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-12-26

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本編完結後に出版された短編集です。
本編はかなりシビアが話が多いのですが、こちらはコメディ風味なので、気軽に味わえます。
遠子先輩も心葉くんも、シリアスタッチでもコメディタッチでも、全く違和感なくこなせるところが、このシリーズの幅の広さですね。
しかも、それぞれの短編に、文学作品がきちんと登場するので、遠子先輩の文学の蘊蓄を楽しみにしている人には、一冊でたくさんの料理を味わうことができるアラカルトメニューといったところでしょうか。
本編の方でちらっと出てきたエピソードを細かくフォローしたり、麻貴先輩や流人くんの視点で描かれた遠子先輩や心葉くんが読めたり、本編をより楽しむことができる作品集になっていると思います。
個人的には、美羽と芥川くんの話が好き。
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2009年08月15日

「“文学少女”と神に臨む作家」野村美月

4757741731“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-04-28

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4757743718“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-08-30

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文学少女シリーズ、本編の最終話になる、7巻目・8巻目です。
これまで謎に包まれてきた遠子先輩の家庭の話がメインになります。
どうして遠子先輩が流人くんの家で暮らしているのか、叶子おばさんとの関係はどうなっているのか、なぜ流人くんがあれほどまでに心葉に小説を書かせようとするのかといったことが、次第に明らかになっていきます。
メインテーマは、遠子先輩の両親と、流人くんの両親との間にある愛憎劇。

話の組み立てとしては面白いと思うんだけれど、作家とそれを育てる人の話にしすぎたことに、ちょっと違和感を感じました。この話のもう一つのテーマとして、心葉が小説を書くのか書かないのかという話があって、それと関連づけるという意味では必要なんですが、どうも作家像をせまく語りすぎているような気がしてなりません。
それと、遠子先輩と心葉の関係だって、最初に「青空に似ている」ありき、二作目を書かせたいという目的ありきではなくても良かったはず。一緒に過ごした二年間に、もっと重みを持たせる意味づけにして欲しかったなぁ。最初はちょっと興味があって会ってみたかっただけだったのに、彼の話を食べているうちに、二作目が書けるのではないか、もしくは、彼の中で書きたいという気持ちが高まっているんじゃないかということを感じてきて…という話だったら、もっと良かったと、個人的には思っています。
大体、叶子さんを論破した時点で、「狭き門」は一人でくぐるものじゃないって話になるのなら、最後に二人が別れなければならない理由は、ないはず。心葉は、最初は叶子さんに圧倒されていたのが、最後は彼女を説得できるまでになるのだから、この物語の中だけでも、ずいぶん成長したはずです。
話の流れとして、その方が感動的になるとはわかっていますが、思わず、「あんたはメーテルか!」と言いたくなりました。

とはいえ、シリーズを通してあちこちにばらまいた伏線を見事に回収し、シリーズ最終話としての役割を見事に果たしていることは否めません。
「月花を孕く水妖」の感想で書いた「地雷」(レモンパイのことですよ)の見事な肩すかしっぷりには笑わせていただきましたし、「白いマフラーとサケをくわえたクマ」は単なる冗談かと思っていたら、ラストで重要なアイテムと化してましたしね。

さて、このシリーズを通して心葉の胸の内を去来するのは、「書くべきか」「書かざるべきか」という葛藤です。
これまで、このブログではあまり触れてこなかったと思いますが、その昔、僕も「書く側の一人」だったことがあります。といっても、大した活動をしていたわけではなくて、大学時代に同人雑誌を作っていただけですが。同人誌っていうと、今の時代、マンガ界の言葉になってしまった感がありますが、そういうのではなく、詩とか小説とかを語学クラスの友人たちと持ち寄って、コピー誌を作っていたのです。
僕は、読み手としての自分は、なかなかの水準にあると自負しているのですが、その目で自分の書いたものを見ると、いかに自分が書き手に向いていないかわかってしまうのですね。悲しいことに。
写真や書評はブログで発表できるのに、自分の書いた小説はほとんど封印しているのは、そういう訳です。まぁ、写真も、見る人が見れば「よくこんなの載せられるなぁ」というレベルかもしれませんが、いいんです、自分で粗が見えなければ。
そんな僕でも、この話を読んでいる時には、「もう一度書いてみようか」という気持ちにさせられることがしばしばありました。写真につける短歌を考えたりということはありましたが、「小説」って形で文章を書いたことは、15年くらいないんですけどね…
posted by akira at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 野村美月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月14日

「“文学少女”と月花を孕く水妖」野村美月

4757739184“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-12-25

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シリーズ6冊目は「特別編」と銘打たれてはいるものの、位置づけとしては7巻に向けてのエピローグという感じですね。
そもそも、ゴシック体のいつものモノローグが、心葉が過去を回想する形で書かれていることが、すべてを象徴しているかのようです。
最初に読んだ時にはあまり意識しなかったのですが、エピローグ部のゴシック体部分に、ななせ派の人にとっては「これは!」と思わせる内容が書かれているんですよね。再読して気づいたのですが、7巻目の最初の部分に出てくるあるキーワードが、ここにさりげなくはさまれていて、「こんな所に地雷(しかもこんな強力なの)を埋めておくなんて!」と思わずニヤリとしてしまいます。
このシリーズの構成力と伏線回収を巧みさは、本当にすばらしくて、再読すると、最初には見えなかったものがたくさん見えてきます。一度全編を書き上げてから、順番に出版していったのではないかと思えるほど。

さて、今回のモチーフは泉鏡花です。前に金沢に行った時に、妻につきあって泉鏡花記念館に行ったのですが、その時に、もっと真面目に見ておけばよかったと反省しています。
泉鏡花がモチーフだけあって、今回はホラー色が強くなっています。遠子先輩が大の苦手なヤツですね。
ホラー的な物語の謎がどう解明されていくのかを楽しむのも、この巻の楽しみ方の一つではありますが、この巻は、それ以上に「遠子先輩の可愛らしさを味わう巻」といっても過言ではありません。遠子派の人たちにとってはたまらない一冊でしょう。
ただ、ここで遠子先輩が無意味に可愛いだけではなくて、ちゃんと次の巻への伏線になっているところが恐ろしいところです。「夜叉ヶ池」の百合と晃の物語が、80年前のゆりと秋良の物語に重なり、そして、そのそれぞれが遠子と心葉の物語に繋がっていく構造になっています。特に、エピローグで遠子がゆりの気持ちを語る場面は、後から読み返してみると、本当に切なくなります。
posted by akira at 10:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 野村美月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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